お、俺は違う!

一昨年の今頃だった・・
工作を行うべく対象者の情報収集をしていた時の話

その日も蒸し暑い夜であった
俺はいつものように対象者達の行動を追っていた

そのカップルは食事を終え
手をつなぎ談笑しながら歩いていった

この段階では、まだ情報が少なくデートのパターンや男性の自宅を割り出す事が目的であった

しばらくすると対象者達は都内某所の公園へと入った

公園内を通過して先のホテルへ向かうのか・・
それとも男性の自宅への近道か・・

ふっと、そんなことを思いながら後を追った

予想に反し彼らは公園の中のベンチに腰を下ろした

不自然に立ち止まれない俺は彼らの前を一端通過して彼らの正面の植え込みの影に回りこむことに成功した・・

この公園は大きいし薄暗いので遠目では見失う可能性を危惧した上での行動だった

しかしやはり不自然だ・・
男が1人で暗闇の茂みに居るなんて・・

おっ忘れてた
携帯の音を消しておかねば・・ プチ・・

うっ蚊に刺された・・
か、痒い・・

早く、一刻も早く移動したい・・
でもできない・・

わぁ、また刺された・・

そんな悪戦苦闘をしながら2人の様子を撮影しようとカメラを出した時であった!

後ろの茂みがガサッと音がしたかと思うと俺の腕は大きな力で引張られたのだ・・
(正直、腰が抜けるかと思った)

次の瞬間、シッと口元に手を当てた見知らぬ50前の男の顔が俺の視界を独占した

まだ早いよ!と、男は小声で囁いた

えっ、何!!??

こっちに入ってもう少し待とうよ
そして何よりそこに居られちゃカメラアングルの邪魔なんだよね

は、はぁ・・と言いながら俺は従うしかなかった
(言い争えばバレちゃうし)

そして俺はその男と共に更なる茂みに入ったのだ

すると男が虫除けのスプレーを差し出しながら言った

経験浅いの?ちゃんと用意しておかないと・・
でも良いカメラ持ってるね
これは暗所でも綺麗に映るよね、俺も持ってるよ
でもピンと合わせが難しいよね(この男よく喋る)

えっ同業者? 探偵?
でも付近にあのアベック以外に人は見えないし・・
一体誰この人??

でも男の次の一言で謎は解けた!

さあ、もうじき始めるよ、君も用意したら?
ここならバッチリ全て撮れるからね~
この間のアベックは激しくてさ~ 

おいおい、おっさん覗きかよ!!
俺はあの2人の行動を追ってるんだよ!!

シッ、声が大きいよ!

続けて、えっそうなの?(一瞬顔色が変ったが・・)
警察の人ではないよね? 探偵さん?

まあ、そんなもの・・

そうか、まあ良いじゃない
似たようなものなんだから・・ね

そういって、おっさんは笑顔を向けた・・

複雑な心境だった・・ お、俺は違う!!

がしかし、その時は一人でないから心強く感じたのも本音だろう

その後しばらくおっさんと共に俺は彼らの本能的行為を眺める事となった
(妙な緊張感の中・・)

行為が始まると、おっさんは無口になった・・

おっさんにとっては満足のいくものではないようだっだが俺はそこから先の行動を知りたいだけなのでどうでも良かった

いや、正直に言いおう・・少し興奮した^^;

ほどなくして彼らは移動を開始した
俺はそれを追跡した

おっさんは、その場に残った

俺達は無言で別れた

別れ際におっさんが「じゃあまた」と言わんばかりに手を上げた
そして「頑張れよ」とも受け取れた

俺も同じように手を上げて別れた「じゃあまた」と「頑張って」の両方で・・

あれから月日は流れたがカップルの居る夜の公園を通るたび茂みに目をやって、おっさんの姿を探す俺が居る

そして、元気かな・・と
あの笑顔を懐かしく思い出すのであった


梟 拝
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