それを依頼者に会って報告すると飯でも一緒に行きません?と私を誘う・・
普段なら丁重にお断りするのだが何故かその時は断れ無かった・・
多分、彼のこの工作に対する思い入れの深さを必要以上に私は受け止めてしまっていたからだろう
彼は妻が妻子ある男性と恋愛関係にあるとこを知ってしまい、その苦境の中から考えた挙句、相手の夫婦を別れさせ、妻の行く先を確保した上で自分から別れ切り出すことを目論んだのです
勿論、奥さんは他の男性との関係がバレいるなどとは少しも気づいていない環境での工作だったのです・・
繁華街から少し外れた居酒屋で私と彼は軽く飲みながら食事した
工作と関係ない他愛のない話をしながら・・
食事を終えて私達は駅まで一緒に歩くこととなった
駅までもう少しというところで彼が、少し酔いをさましましょうよ・・笑顔で言う
本当はクタクタで早くホテルに帰りたかったのだがそれも断れなかった・・
付近の公園で腰を下ろし、缶コーヒーを飲みながら私達は他愛のない話を続けた・・
ふっと無言になった彼の方を見ると彼は静かに夜空を見あげていた
私には、かける言葉は見つからなかった
手の中の缶コーヒーは冷たくなっていた
私も一緒に夜空を見あげた
ほんと、それしか出来なかった・・
しばらくして彼が、帰りましょうか・・と口を開く
そうですね・・と、私はうなずいたが笑顔の彼の目に、かすかな涙が見てとれた・・
彼の奥さんに対する愛情というか未練というか、これから何知らぬ顔をして別れを切り出す、決心の表れというか、何ともいえない表情だった
私の口から、今夜は飲もうか!? という言葉が自然と出ていた
はい、お願いします・・と答えた彼の笑顔に涙は無かった
私達は来た道を戻り、鮮やかなネオン街の中に入って行きました
たとえ、そこが偽りの世界だと分っていても今はその中で傷を癒せるのだと信じたから・・
梟 拝
愛情って色んな形や大きさがありますね
今はただ彼の幸せを願うばかりです
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