場所は秋葉原の駅からほど近いパーツ屋などが密集する中ほどの店先で・・
その日、私は赤外線投光器を買いに行っていた
それは撮影時に暗闇を目に見えない光線にて照らす特殊なライトのようなものだ
それを選んでいる時にふっと視線を感じて、その視線を発する方向に顔を向けた
そこには、おっさんが立っていた
視線が合うと、そのおっさんは笑顔を投げかけてきた
私は「あっ」と思わず声を出しながら、そのおっさんのもとに歩み寄った
もちろん私の顔にも微笑が浮かんでいた
おっさんはおもむろに「元気?」と声を発した
私は「元気ですよ」と答えながら「頑張ってるの?」と言葉を返した
おっさんはニコリと無言で頷いた
このおっさんは、以前対象者の追跡中に公園の茂みで一緒になった覗きのプロフェッショナルのおっさんだ
(07.08.22 「お、俺は違う!」参照)
だから私の「頑張ってる?」は「覗いてる?」の意味でおっさんの無言の頷きは「おう頑張って覗いてるぜ!」という意味だ
おっさんは私の買い物を察してあれこれとプロの視点でアドバイスをしてくれた
おかげで商品比較や電源確保などで悩んでいた点は全てクリアできた
流石だと思った
支払いを終え商品を受け取りお礼を兼ねておっさんとお茶でもしようと振り返るとそこにおっさんの姿は無かった
私は小走りに大通りに出て雑踏の中におっさんの姿を探したが見つけることは出来なかった
と同時にそれ以上探そうとも思わなかった
それが裏の世界で接点を持った者同士の暗黙のルールかもしれないと私は悟ったからだ
何より、何となくだがまた会えると確信めいた気がしたので納得できたのであろう
雑踏に背を向け「またね」そして「有難う」と互いの名も知らぬ戦友に心の中で挨拶をして私はその場を後にした
追記・・
太陽の下で見たおっさんの顔は案外と若かった
ひょっとすると私と年もあまり変らないかも・・とも感じた
なので、おっさんという表現に少々抵抗を感じながらこの記事を書きました^^;
梟 拝
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