
夜の香りが強くする女性から、別れたい男がいる、、、と相談を受けた
何故別れられないのか?と問うと女は言った
その男は今刑務所にいます、しかしもうすぐ刑期を終えて出てくるのです、、、と女はハッキリと言った
刑が確定した時は待てるつもりだったが結果的には待てなかった、とのことだった(新しい男が出来たのだ)
う~ん困った
しかも聞くと、その元彼は組織の人間
いわゆる反社、カタギではない
う~ん困った
彼らのシノギと色事に首を突っ込むほど厄介なことは他にないのだ
う~ん困った
知り合いの紹介でなければ面談前にお断りしただろう相談内容
紹介者のMの顔が苦々しく目に浮かぶ
酒の席で無責任に「頼りになる奴がいる、紹介するよ」とでも吹聴しただろうMの顔
目の前には、縋るような目で少し潤んだような瞳を向けてる女あり(そこいらの女優じゃ勝てないレベル)
元彼がこの瞳の持ち主を再び支配しようとするだろう魅力がそこには十二分にあった
、、、おっと美人を前に鼻の下を伸ばしてる場合じゃない、う~ん困った、どうしよう!?
で、今彼には元彼のこと伝えてるの?と問う
いいえ、と彼女
そりゃマズイね、引いちゃうよ、と私
はい、と少し気まずそうに彼女
元彼の知人に間に入ってもらえないの?
、、、、、、困ったように沈黙する彼女(それが出来たらここには来てない、と聞こえてきそうな空気)
ところで今彼の職業は?
、、、、、、実は同業者なんです、と彼女
はぁ!?元彼と同じってこと!?
はい
そりゃマズイ、放置してたらゴジラ対メカゴジラの戦いになるじゃん(おじさんの例えは古い、ゴメン)
、、、、、、、沈黙(だから相談してんだよ、と聞こえてきそうな空気)
とりあえず今彼に本当のこと伝えなよ、あとは彼らが彼らのルールで片をつけるだろうよ、それしかない
、、、、、、、困ったように沈黙
不安は分かるけど、ここは誤魔化すのが一番駄目、話が変にこじれるだけ、どっちかの男の肩を持つ訳ではないけど男の面子を潰すようなことはしちゃ駄目、その為にもまずは正直に伝えなよ、、、と、こんこんと説得
、、、、、、、納得したかどうかは別として、彼女はその覚悟で帰って行った
私は速攻でMに電話を入れて、俺を面倒に巻き込むな!と大激怒
お詫びとしてMにご馳走して貰うことで、一応こちらの揉め事の話はついたのでした
で、数ヵ月後、悪友Mと美味しいと評判の焼肉店に行こうとしたら、店の前に1台の高級車が止まった
運転手してた若者が迅速に後ろに回って後部座席のドアを開けた
ひと目で組織の人間とわかる押しの強そうな男が降りてきた
若い男は深く頭を下げた
続いて綺麗な女が降りてきた
Mと私は足を止めハッと顔を見合わせた、そう例の女だった
二人は頭を下げた若者の前を通り過ぎ鷹揚と美味しいと評判の焼肉店に入っていった
確か元彼は20代、今の男は50代、などと考えているとMは男の素性を知っていると話しだした
それを聞いた私は決着しただろう目の前の状況に納得した
Mと私は目的地であったはずの美味しいと評判の焼肉店の前を自然と通り過ぎていた
ここで会ってはやはり互いに気まずい
、、、彼女の選んだ人生に幸あれ
それにしても色んな相談が舞い込む別れさせ屋です
色んな人生がありますね
梟 拝